作業療法士になるために、実習は必須?
実習先や臨床実習の内容を解説

作業療法士になるには、専門学校や大学などの養成校で行われる臨床実習に参加する必要があります。

臨床実習では、作業療法士として実務経験のある指導者の指導のもと、学外の医療機関に出向いて現場を体験します。座学だけでは学べない実践的なスキルを習得できる貴重な機会ですが、実際の患者さんや先輩作業療法士と触れ合うため、不安を抱えている方も多いと思います。

 

今回は作業療法士になるために必要な臨床実習を取り上げ、実習先や臨床実習の内容について解説します。臨床実習の機会をうまく活用することが、即戦力の作業療法士として活躍するためのポイントです。これから作業療法士を目指す方は、ぜひ記事の内容を参考にしてください。

 

 

 

作業療法士に「実習」は必要?


作業療法士に「実習」は必要?

 

作業療法士を目指す方の中には、「実習は必要なの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。作業療法士になるためには、養成校に通っている間に800時間以上の臨床実習に参加し、単位を取得しなければなりません。臨床実習を行う目的は、作業療法を受ける患者さんや利用者の全体像を把握すること、作業療法の計画・治療・援助などを通して、作業療法士としての知識と技能および態度を身につけること、保健・医療・福祉にかかわる専門職としての意識の向上を図ることにあります。

臨床実習は、臨床の現場で作業療法士としての姿勢や人間性を育み、作業療法の知識と基本的な技能を体験するという重要な役割を担っているため、作業療法士になるために必須の授業となっています。

 

臨床実習では、学生がチームの一員となって患者さんへのリハビリを行います。学校で学んだことを確認し、さらに知識を整理、活用することで、対象者のニーズに合った実践的スキルを高めていきます。また、作業療法士として働いている人と触れ合う機会も多いため、作業療法士の仕事内容や働き方を知ることで、いざ現場に出たときにスムーズに動けるようになるでしょう。

 

2020年4月から、高齢化の進展に伴う医療需要の増大や、質の高い作業療法士を養成するために、臨床実習に関連するカリキュラムが改正されています。例えば総単位数。改訂前は「93単位以上」と決められていましたが、「101単位以上」と引き上げられました。臨床実習の単位数も「18単位」から「22単位」に変更されています。また、臨床実習1単位の時間数も見直されており、「1単位あたり45時間」から「1単位あたり40時間以上」となり、実習時間外に行う学修などがある場合には、その時間も含めて「45時間以内」で設定するよう変更されています。

 

臨床実習は、一人の作業療法士として社会に出る準備を行う機会として必要不可欠になっています。

ほとんどの養成校が臨床実習に力を入れており、作業療法の現場に慣れるために、1年次から臨床実習を導入している学校も多くあります。作業療法士として必要な知識・技術の多くをこの臨床実習で学ぶため、積極的に参加しましょう。

 

 

 

臨床実習ではどんなところに行くの? 実習先・実習場所を解説


臨床実習ではどんなところに行くの? 実習先・実習場所を解説

 

臨床実習では、学生が学外の施設や病院に出向き、作業療法の現場を見学・体験します。

実習する場所は下記のように規則で決められています。

 

・総実習時間の3分の2以上を医療提供施設において行う

※ただし、医療提供施設における実習の2分の1以上は病院または診療所で行う

 

・「訪問リハビリテーションまたは通所リハビリテーションに関する実習を1単位以上行う」

 

作業療法士の実習先は医療機関が中心ですが、実習先は1つとは限りません。専門学校によってはさまざまな受け入れ先と提携しており、さまざまな職場で作業療法士の仕事を体験することができます。ここでは臨床実習で訪れる主な実習先を紹介します。

 

大学病院・総合病院

病気の発症直後や手術後の機能回復を支援したり、退院後の生活を見据えて食事や入浴、着替えなどの生活動作を行う能力の向上をサポートしたりします。入院や治療が長引いている人、社会復帰を早急に目指す人など、患者さん一人ひとりの不安に寄り添いながらリハビリを提案していきます。

 

リハビリテーション病院

リハビリテーション病院とは、さまざまな病気や外傷により身体機能が低下した患者さんを対象にしたリハビリをメインに行う病院のこと。自宅復帰・社会復帰を目指す回復期の患者さんに対して、集中的かつ効果的にリハビリを行うことで、機能の回復や日常生活で必要な動作の改善を図ります。

 

 

精神科病院

統合失調症やうつ病、認知症などを抱える患者さんを対象に、創作活動やレクリーションなどのリハビリを通じてコミュニケーション能力や体力向上を支援します。身体領域のリハビリと比べて、患者さんやそのご家族に寄り添いながら支援していくことが求められます。

 

 

介護老人保健施設

介護老人保健施設とは、利用者の心身の機能の維持回復を行い、在宅復帰できるよう支援していく公的施設のことです。利用者に対して機能訓練や日常生活動作訓練を行うだけでなく、介護士に対して介助法やリハビリ方法の指導・アドバイスを行います。

 

デイケア

デイケアとは、要介護状態にある高齢者が入浴や排せつ、食事などの介護サービスを受け、リハビリを行うための施設です。作業療法士はレクリーションや体操などを通じて、日常生活全般で必要な身体機能の維持・改善を支援します。

 

訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションとは、利用者の自分らしい生活を支援するために、作業療法士や理学療法士などが利用者の自宅を訪問し、日常生活で必要な機能訓練、生活動作訓練を行うサービスのことです。自宅環境の改善提案やご家族へのアドバイスなども行います。

 

 

 

実習では具体的にどんなことをする? 実習内容を解説


実習では具体的にどんなことをする? 実習内容を解説

 

学外の施設や病院で行われる臨床実習の内容は、いくつかの種類があります。ここでは社会医学技術学院(社医学)で行う実習を取り上げて解説します。年次によって実習内容や目的が異なるため、それぞれの実習内容の目的や内容を押さえておきましょう。

 

1年次 臨床見学実習 [5日間]

施設や病院など、作業療法士の実際の現場を見学しながら、働くイメージを具体的に把握します。早期から作業療法の現場を体験することで、専門職としての心構えやチームにおける役割などを学んでいきます。

 

2年次 臨床実習Ⅰ(身体障害・高齢期障害領域:検査測定実習/地域リハビリテーション見学実習)[2週間]

臨床実習指導者の指導のもとで、身体障害・高齢期障害領域におけるさまざまな検査・測定方法を学びます。あわせて地域リハビリテーション領域の訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション部門等の見学実習を行います。実習終了後には学生間で学んだことや経験したことを発表して、質疑応答や意見交換などのディスカッションを行い、全体的な理解を深めます。

 

3年次 臨床実習Ⅱa(精神領域:面接実習)[2週間]

3年次には、精神科作業療法場面の観察・面接を主体とした実習を行います。臨床実習終了後には学院でセミナーを実施し、教員の指導の下、次週経験の問題整理および分析のために、学生は実習経験を発表して質疑応答や意見交換などの集団討議を行い、理解を深めていきます。

 

3年次 臨床実習Ⅱb(身体障害・高齢期障害領域:評価実習)[3週間]

2年次までに学修してきた知識・技術を活用するために、患者さんの症状を検査・評価した上で、どのようなリハビリテーションプランを立てるのか、臨床実習指導者とともに考察します。多くの患者さんとコミュニケーションを取り、生活の質の向上を考慮したプログラムを立案します。

 

4年次 臨床実習Ⅲ(総合臨床実習)[8週間×2回]

臨床実習の集大成として、プランの作成から実践、測定、評価までを行います。対象者の課題やニーズを正確に把握できたか、評価に合った治療プランが作成できたか、計画した治療プランを通してどのような効果が得られたのかなど、臨床実習指導者や医療関係者の方々とともに振り返ります。実習後には学生同士で実習経験を共有するとともに、実践を通して見つけた課題などをレポートにまとめて提出します。

 

 

 

まとめ


 

今回は、作業療法士を目指す方のために、臨床実習の実習先や内容、種類について解説しました。作業療法士の養成校で学ぶ時間は3,150時間以上と決められており、その中でも臨床実習は約4分の1を占めるほど重要な授業です。

 

社医学では、皆さんが安心して臨床実習に参加できるよう、多くの受け入れ先と提携しています。卒業生が働く実習先も多く、後輩のために患者さんへの対応方法や作業療法士としての心構え、接遇についても丁寧にアドバイスしてくれる方がほとんどです。

 

社医学 作業療法学科は2025年度より夜間部から昼間部へ移行します。(設置計画申請中)。伝統校ならではの信頼と実績をもとに、より質の高い授業を追求していきます。作業療法士を目指す方は、学校説明会やイベントに参加してみてください。

 

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